『ウィザードリィ外伝 五つの試練』Steam版シナリオエディタを用いた、ユーザーシナリオ制作講座。今回は「第4回」となる。
前回の時点で「呪文リスト」の作成を完了し、今回は個々の呪文の詳細を設定する作業に移る。
シナリオエディタのページ上部メニュー「データ各種」から、サブメニューの「各呪文設定」を開き、呪文カテゴリーごとに分けられた個々の呪文について、詳細な仕様を設定してゆくのだ。
全ての呪文に共通の設定
まず、全ての呪文に共通する設定がいくつか存在する。
レベルアップで呪文を覚えない ―― キャラクターのレベルアップ時には、呪文を習得しない。アイテムのSP「○○の記憶」を解放することで、その呪文を覚えることが可能
使用すると呪文を忘れる ―― 呪文を使用すると、その呪文を一時的に忘れる。レベルアップの際に再習得が可能
戦闘中 ―― 戦闘中に呪文を使用可能
キャンプ中 ―― キャンプ中に呪文を使用可能
効果音の選択 ―― 呪文を使用した際の効果音を選択
また、呪文の種類によっては「変数」を設定することが可能な場合もある。
主に「状態変化」系の呪文において、状態異常の追加効果の発生確率(効きやすさ)をコントロールする数値のはず――なのだが、現時点で各呪文の「変数」の持つ意味に関し、シナリオエディタ上では一切の説明がない。(※例外的に「ブレイクスクリーン」「サフォケーション」の呪文についてのみ説明がある)
この点については既に開発側にフィードバック済み(「変数」の大小が及ぼす影響について、シナリオエディタ上に説明がほしい)であるため、今後シナリオエディタ上で各変数の意味を確認できるようになるかもしれない。
全ての呪文に共通する設定項目は以上となる。
それでは「呪文カテゴリー」ごとに、個々の呪文の詳細を設定してゆこう。
AC系
戦闘時に詠唱し、敵味方のAC(アーマークラス)を変化させる呪文の設定。
今回のサンプルシナリオで採用した呪文は、味方のAC(アーマークラス)を下げる守備系呪文として「アーマー」「バックラー」「メガアーマー」「ギガアーマー」「プロテクション」の5つ。敵のAC(アーマークラス)を上げる(=悪化させる)攻撃系呪文として「ダークネス」「トータルテラー」の2つだ。
味方のAC(アーマークラス)を下げる守備系呪文については、「AC低下」効果を数値[0~99]で指定し、さらに「呪文対象となる味方」の範囲を選択するだけである。
味方のACを下げる常駐呪文「プロテクション」の場合、戦闘時に詠唱するAC低下呪文と同様の設定に加え、呪文の継続する「歩数」を数値指定[0~99999]する。
敵のACを上昇させる(=悪化させる)攻撃系呪文についても、基本的な設定方法は変わらない。「AC上昇」効果を数値[0~99]で指定し、さらに「呪文対象となる敵」の範囲を選択するのだ。
注意が必要なのは、敵のAC上昇に加え、さらに「追加効果」を与える呪文「テラー」「トータルテラー」の設定だ。
これらの呪文については、「追加効果」(=状態異常)に対して「抵抗モンスタータイプ」を設定するチェック欄が設けられている。
一見すると、チェックしたモンスターの種類に対して「追加効果」(初期値は「恐怖」)が発生しなくなる設定――だと思いがちだが、実際には「追加効果が効きにくくなる」だけであり、呪文による状態異常に対して100%完全に抵抗されるわけではないのだ。(※開発側へ仕様確認済み)
ちなみに「睡眠」「麻痺」「石化」「死亡」に関しては、個々のモンスターデータ側で「抵抗」を設定することにより、それらの状態異常に対する「完全な抵抗力」を付与できる。問題はデフォルトの「恐怖」だ。
モンスターデータ設定において「恐怖」抵抗を設定するオプションは(少なくとも現時点で)存在しないため、「テラー」「トータルテラー」の呪文を喰らった敵は、ラスボスだろうと裏ボスだろうと、恐怖に震える無様な姿を晒すことになるのだ。(※プレイヤーキャラクター側は、アイテムの魔法効果「状態抵抗:恐怖」で抵抗可能)
ここで役立つのが、「抵抗モンスタータイプ」の上に配置されている「吸引/浮遊/聖/魔」のチェックボックスである。
ここにチェックを入れ、さらにモンスターデータ側の詳細設定で同属性(吸/浮/聖/魔)の抵抗を付与することで、「恐怖」の追加効果に対する「完全抵抗」を備えたモンスターとなる。
通常、ラスボスや裏ボス等の強大な敵モンスターには「スティールライフ」対策として「吸引」抵抗を設定するだろうから、「トータルテラー」の「恐怖」についても同様に「吸引」抵抗で対策するのがよいかもしれない。だが、今回のサンプルシナリオでは「スティールライフ」は敵モンスター専用の呪文として登場させるため、代替案として「魔」抵抗を利用することにした。
なお「AC系」呪文に関して、常駐呪文である「プロテクション」以外の戦闘中限定で使用する呪文についても、何故か「キャンプ中」に使用可能となるオプションにチェックを入れることができる。しかし、そのオプションにチェックを入れたとしても、実際のゲーム画面上では、それらの呪文をキャンプ中に詠唱することはできない。(※キー操作を受け付けない)
攻撃呪文
戦闘時に詠唱し、敵にダメージを与える攻撃呪文の設定だ。
今回のサンプルシナリオで採用した呪文は、「スパーク」「ファイア」「メガファイア」「サンダー」「フリーズ」「エナジーボルト」「メガフリーズ」「ニュークリアブラスト」「ギガパニッシュ」の9つ。
そして「アイテム専用」呪文の「ギガファイア」と、「モンスター専用」呪文の「パニッシュ」「メガパニッシュ」である。
攻撃呪文の基本的な設定は、「ダメージ属性」ならびに「呪文対象となる敵」の範囲を選択し、具体的なダメージの数値として[ダメージダイス(B)×ダイスを振る回数(A)]を入力するだけである。
なお、アイテムの魔法効果「○○属性ダメージ(+)」は、攻撃呪文の「ダメージダイス(B)」の値を[0~99]の範囲で増加させるため、攻撃呪文の設定で「ダイスを振る回数(A)」の値を大きくすればする程、同魔法効果の恩恵も大きくなることは覚えておきたい。
状態変化
戦闘中に使用し、相手に状態異常を与える呪文の設定だ。
今回のサンプルシナリオで採用した呪文は、「スリープ」「コンフュージョン」「デッドリーエア」「サイレンス」「デス」の5つである。
各呪文ごとに「追加効果」となる状態異常の種類と、「呪文対象となる敵」の範囲を選択する。(※唯一「サイレンス」に関しては「追加効果」の種類を選択できない。デフォルトの「呪文封じ」で固定されている)
さらに、呪文が効果を発揮した際に表示される「メッセージタイプ」を選択することもできる。
なお「抵抗モンスタータイプ」の設定には注意が必要だ。
既に「トータルテラー」の設定の際にも説明したが、特定のモンスター種に対し、あくまで「追加効果が効きにくくなる」設定であり、状態異常の追加効果に対する「完全抵抗」(=100%効かない)が付与されるわけではない。
追加効果に対する「完全抵抗」については、個々のモンスターデータ側において適切な抵抗(眠/麻/石/死)を個別に設定する必要がある。
また「状態変化」系呪文の設定画面では「抵抗モンスタータイプ」の枠に「吸引/浮遊/聖/魔」の抵抗チェックが含まれているが、これらは「トータルテラー」の場合と同様、実際にはモンスタータイプによる抵抗設定とは仕様が異なり、常に「完全抵抗」として扱われる。
これらの「完全抵抗」オプションは、呪文の追加効果として「恐怖」を設定した場合(「コンフュージョン」「チャーム」の初期設定)や、呪文「デッドリーカズム」に対する「浮遊」抵抗などで活用するといいだろう。
「即死」系の状態変化呪文である「デッドリーエア」「デス」「カルネージ」については、他の状態変化呪文とは異なり、「抵抗モンスタータイプ」による呪文抵抗の設定が「完全抵抗」として機能する。(ちなみに、指定レベル以下の敵モンスターを塵化する「サフォケーション」の呪文も同様)
チェックを入れた「モンスター種別」に関しては、当該の呪文に起因する追加効果が100%完全にレジストされるのだ。(※追加効果を「死亡」以外の「恐怖/睡眠/麻痺/石化」に変更しても同様に完全抵抗)
この仕様を利用して「抵抗モンスタータイプ」にチェックを入れ、逆にモンスターデータ側で「即死」抵抗を設定しなければ、即死呪文には抵抗するが物理的なクリティカルによる即死攻撃で倒すことは可能、というモンスターを設定することができる。
また、これらの即死系呪文(デッドリーエア/デス/カルネージ)については「レベル制限」のチェックボックスが存在する――のだが、様々な検証を試みた上でも、どのような「制限」なのか現時点で解明できていない。仕様を理解していない機能はなるべく使用を避けるべきなので、今回はチェックを入れる必要はないと判断する。
なお「デッドリーカズム」もデフォルトの呪文効果を見る限りは「即死系」呪文に該当するが、「抵抗モンスタータイプ」の仕様については、その他の状態変化呪文と同様の扱い(=効きにくくなるだけで「完全抵抗」ではない)である点に注意しよう。初期設定の「浮遊」による100%完全抵抗をそのまま活かしてやればいい。
回復系
HPやステータス異常を回復させる呪文。
今回のサンプルシナリオで採用した呪文は、HP回復呪文が「ヒール」「メガヒール」「ギガヒール」「ヒールパーティー」の4つ。状態治療呪文が「キュアパラリシス」「キュアポイズン」「キュアオール」の3つ。そして最後に蘇生呪文の「レイズアッシュ」である。
HP回復呪文の設定は、「回復対象となる味方」の範囲を選択し、HP回復量を数値[回復ダイス(B)×ダイスを振る回数(A)]で指定するだけである。ちなみに「ヒールパーティー」のみ、最大HPの約半分(実際のゲーム上での使用感としては50~80%くらいか?)を回復するオプション設定が存在する。
状態異常を治療する呪文については、「治療対象となる味方」の範囲を選択し、さらに「状態回復」の対象ステータスを指定する。チェックを入れた箇所から左側にある状態異常ステータスは全て治療の対象となる。
また、毒の治療については、別途「毒の治療」にチェックが必要。
状態回復を「無し」に設定し、同時に「毒の治療」を選択すれば、毒治療に特化した呪文となるわけである。
HP回復&状態治療の効果を兼ね備えた「キュアオール」の呪文設定は、「回復&治療対象となる味方」の範囲を選択し、「状態回復」の対象として「石化」を指定し、さらに「毒の治療」と「全回復」にチェックが入っていればよい。
この「キュアオール」については、シナリオエディタの仕様上「全員のHP完全回復&全ての状態異常を治療&リスクゼロ蘇生」という最強の回復系呪文とすることも可能である。
蘇生呪文については、「蘇生対象となる味方」の範囲を選択し、さらに「灰の状態からの蘇生」の可不可、HP回復(全回復のみ)の有無を指定する。
また、蘇生に「成功」した際の副作用(ペナルティ)として、年齢や特性値の変化(年齢+1/生命力-1)を指定することができる。
最後に、蘇生に「失敗」した際のステータスの変化を指定すれば、全ての設定が完了だ。
呪文抵抗
敵味方の呪文抵抗を増減させる呪文。
今回のサンプルシナリオで採用した呪文は、味方の呪文抵抗率を上昇させる魔法障壁「マジックスクリーン」、相手の呪文を失敗しやすくする魔法結界「アンチマジック」、そしてその両方の呪文効果を打ち消すことができる「クリアマジック」の3つである。
呪文抵抗率を上昇させる「マジックスクリーン」の呪文は、呪文効果のレベルを変数(0~20)で指定する。具体的な仕様は不明だが、恐らく数値が大きい方が強力になる――のだと思う。今回のシナリオでは、必要最低限の効果になると思われる変数[1]を設定する。
また「対象の選択」については、モンスター側による呪文使用時のみ意味を持つ――はずだ。プレイヤーキャラクターが詠唱する際には、そもそも「1グループ」でパーティーメンバー全員の呪文抵抗率が上昇する。
「アンチマジック」の呪文は、「呪文対象となる敵」の範囲を選択するだけだ。敵1グループを対象とするか、敵全体に影響を与えるかのどちらかだ。なお、敵モンスター側が使用してくる際には、どちらの設定でもプレイヤーキャラクター全員が呪文の対象となる。
ちなみに、変数は[20]で固定されており、変更はできない。
「クリアマジック」の呪文は、キャンプ中(探索中のコマンド詠唱含む)に使用した場合、いわゆる「常駐魔法」の効果を消去する。
一方で戦闘中に詠唱すると、「マジックスクリーン」「アンチマジック」の呪文効果を打ち消すことが可能だ。
戦闘中に使用した際の呪文効果の消去対象は上記の通り「マジックスクリーン」「アンチマジック」限定であるため、敵味方双方が詠唱したAC変化系呪文(アーマー/ダークネスetc.)による「AC低下/上昇」や、戦闘補助呪文「ヘイスト」による攻撃回数の上昇、そして「シックスブーンズ」「セブンスブーン」の呪文による神の奇跡――「呪文の効果を上げる」「魔法からの保護」「防御力を上げる」のような効果が打ち消されることはない。
なお「戦闘中は継続魔法も消す」のオプションにチェックを入れた場合、戦闘中の使用時に「マジックスクリーン」「アンチマジック」の呪文効果の消去に加えて、味方の「常駐呪文」の効果も同時に打ち消される仕様となる。
様々な効果
「プリズミックレイ」「プリズミックミサイル」の呪文については、今回のサンプルシナリオに登場しないため、設定に関する説明を割愛する。
後日、シナリオエディタ非公式マニュアルの一項目として情報をまとめる予定だ。
戦闘呪文
今回のサンプルシナリオで採用した戦闘呪文は、「スティールライフ」「レデュースマジック」「コンジュレーション」の3つである。いずれも敵モンスター側の専用呪文として登場させる。
「スティールライフ」は、相手のHPを一桁まで下げ、同時に自分のHPを回復させる呪文。
「呪文対象となる敵」の範囲は初期値では「敵1体」だが、今回のサンプルシナリオでは「1グループ」対象の強化版とする。
この呪文における「抵抗モンスタータイプ」設定は、通常の状態変化呪文の仕様(追加効果が効きにくくなるだけ)とは異なり「完全抵抗」(100%レジスト)として機能する。(※「即死系」の状態変化呪文と同様の仕様)
ただし今回のシナリオでは「敵モンスター専用」呪文となるため、モンスター種別による抵抗を設定することに意味はない。
なお「HPを吸収しない」のオプション項目にチェックを入れれば、死の一歩手前までHPを削り取る純粋なダメージ呪文になる。
「レデュースマジック」は、相手のMPを強制的に減少させる呪文。
「呪文対象となる敵」の範囲を指定する。今回のサンプルシナリオでは「敵モンスター専用」呪文のため、デフォルトの「1グループ」のままで、プレイヤーキャラクター側の全員に効果を及ぼす呪文となる。
敵モンスター側が詠唱することで、プレイヤーキャラクターのMPがランダムに減少するのだ。
召喚呪文「コンジュレーション」に関しては、特別な設定項目はない。
呪文詠唱で呼び出されるモンスターの種類については、シナリオ全体の「ゲームルール設定」において別途指定する。
継続呪文
今回のサンプルシナリオでは、継続呪文として「レビテイト」「ネームモンスターズ」「ブライトネス」「マジックライト」の全てを採用する。
継続呪文の基本設定は、呪文の効果が継続する歩数を[0~99999]の数値で指定するだけである。
なお「レビテイト」の呪文についてのみ、「先制攻撃ポイント」(遭敵時にプレイヤーキャラクター側が先制攻撃する確率が上昇する)を[0-99]の数値で設定する。
ちなみに、この「先制攻撃ポイント」を[0]に設定し、ゲームルールの基本設定で「レビテイト(浮遊)状態で、敵から先制されない機能を外す」にチェックを入れることで、純粋に「浮遊」するだけの呪文として機能させることができる。
位置座標呪文
今回のサンプルシナリオで採用した「位置座標呪文」は、「ウィザードアイ」「テレポーテーション」の2つである。
「ウィザードアイ」については、初期設定のままで問題ない。
オプションの「座標のみ」にチェックを入れた場合、踏破済みマスのオートマップが記録されず、自分の位置座標のみ表示されるようになる。
「テレポーテーション」も、初期設定のままで問題ない。
「未侵入のエリアにも移動可能」にチェックを入れると、未踏破の座標を指定して転移することが可能になる。なお「戦闘中の呪文詠唱」による未踏破座標へのランダムテレポートに関しては、この設定とは無関係に発生する。
探索呪文
今回のサンプルシナリオでは、「探索呪文」として「ディバイントラップ」のみ採用する。
「宝箱の罠」の識別に成功する確率の「上限値」を、[0~100]の数値で設定する。すなわち、この呪文を使えば罠の識別に完全に成功(100%)するという設定も可能だ。
願い
「シックスブーンズ」「セブンスブーン」そして「プロディジー」の呪文については、今回のサンプルシナリオに登場しないため、設定に関する説明を割愛する。
後日、シナリオエディタ非公式マニュアルの一項目として情報をまとめる予定だ。
オリジナル呪文名の設定
今回のサンプルシナリオでは、「アイテム専用」「モンスター専用」の呪文については、呪文名の変更機能を利用して独自の呪文名を与えることにする。
「各呪文設定」から「呪文名」を選択し、「シナリオ更新時に呪文を更新する」にチェックを入れる。これにより、この画面上で入力したオリジナルの呪文名が、「シナリオ更新」の際にゲーム本体上で常に読み込まれるようになる。
後は、呪文リストから任意の呪文を選択し、その名称を変更してゆくだけだ。
これで、呪文関連の設定はほぼ全て完了した。
次回は「アイテムデータ」の設定に移る。